千葉県南房総~春の真鯛と産卵最盛期グレ~中島杯争奪戦
3月末は中島会長の誕生日を祝う、名ばかりの釣り大会が恒例だ。今年は、時間も場所も指定する新ルールを導入し、中島グループ内で新たな釣りバトルが繰り広げられた。
参加者はわずか5名だが、彼らは毎週千葉県の外房エリアに出向き、腕前を競い合う凄腕たちだ。
フカセ釣り釣果
グレ(メジナ):35~38㎝ 15匹位(半分リリース) / 真鯛72.5㎝
フカセ釣りの解説
潮の流れ・海の状況詳細
潮の流れは比較的穏やかで、海の状況は今夜釣りをするには最適だ。
昼過ぎに外房エリアの釣り場をいくつか調査した結果、乙浜港では家族連れが笑顔でイワシや小鰺を釣り上げている姿を目にした。他の場所では、イワシなどの小魚の大群をいくつか目撃し、外房エリア全体がイワシ活気づいていることが確認できた。
今回のフカセ釣りの解説
中島杯のルールは至ってシンプル。夕暮れがスタートで、夜中の0時までに検量を終える必要がある。ここでの勝敗は、重さではなく、魚の体長で決まる。ただし、ウツボやボラなど一部の魚は対象外。釣り場は参加者の裁量に任されており、検量に間に合う場所ならどこでもいい。
私が釣り座に選んだ場所は、久しぶりに足を運んだ磯で、過去にはコロダイの大物を手にしたことがある有望地だ。大型魚が活動を始めるのは21時以降と見込んでいる。日が高いうちには、周囲の環境を入念にリサーチする時間を取る。
夕方薄暗くなりコマセを撒き始める。最初は水くみバケツにコマセを混ぜたものを数回撒く。次に足元のサラシにコマセを数分毎に切らさずに撒く。いづれも周辺の魚を呼び寄せるためのコマセだ。
30分後、仕掛けを投入する。このエリアだけ比較的波が荒いため、打ち寄せる波が過ぎたタイミングを狙う。潮の壁がはっきりと存在し仕掛けが吸い込まれていくが、上潮と下潮の流れが違うため仕掛けの微調整が必須である。
二投目、仕掛けを潮上に引くようにコントロールすると浅いタナで32㎝の尾長メジナが釣れる。魚影は濃いようだが根の際で喰ってきた。オープンエリアはアタリは無く何も居ないように見えるが、その静けさが次の獲物を予感させる。
目の前の約20m先には大きな岩が2つ存在し、手前から出る下潮がこの岩の間を通って沖へと流れている。波が来るたびに上潮は手前に寄せてくるが、潮の流れが複雑だ。
こういう場合の潮は、下潮へ潜り込ませることのできるガン玉を打ってそれに適応できる浮力のあるウキを使う。
潮の流れは、その瞬間瞬間で流れは微妙に変化する。
実際に仕掛けを入れながら、ウキの動きやラインの張り具合などを感じ取らないといけない。
① 沖から手前に寄せて来る上潮
② 足元から沖への下潮は沖へ流れている
③ 沖へ行く下潮は、岩の手前で左右に分かれる
④ 上げ潮だと、全体的に左から右へと流れる
潮の流れは複雑だが、足元にコマセを撒くと、オープンエリアの潮の壁や上潮と下潮の境目で魚が待ち構えているはず。しかし釣れるのは手前の「根の付近」だけ。根へエサをよほど近づけなければ魚は釣れない状況だ。
メジナは大型魚が現れると、根に隠れ、なかなか釣れなくなる。これはフカセ釣りの熟練者もよく知る現象だ。大型魚が近くにいることは間違いない。上潮が厚いサラシに覆われているように見えるが、その下の潮の流れは安定しており、大物が潜んでいる可能性が高い。
仕掛けが下潮に留まることができるように微調整を行なう。ここでエサに誘いをかける。誘いのバリエーションは豊富で下記を参照して頂きたい。
エサの誘い方
魚は動くものに興味を持つ。その時々に応じて不規則な動きや同じ動きを組み合わせる。
A: 1~5㎝ 引く /リール 1/4回転
B: 10~15㎝引く /リール半回転
C: 20~30㎝引く /リール一回転
D: 仕掛けを止める /止める時間は数秒~数十秒
E: 仕掛けを戻す /戻す距離は数cm~100cm~
1:ゆっくり 2:普通 3:早く
※ A~Eと1~3をランダムに選択し、色々と組み合わせてエサを誘う。
※ アジ釣りにも有効である
大型魚が居るとすればあるタイミングで必ず喰ってくる。また針にかけた直後は根に向かうであることを予想しエサを誘う。
大型魚を釣り上げるための鍵は、潮の壁への仕掛け投入とコマセとエサの同調にある。エサとコマセを一体化させることで、大型魚の目を引き、釣り上げる確率を格段に上げることができる。
・・・という説明書きはよく見かける。
しかし、これとは別に、真に重要なのは、釣り人が「無心」の状態になることである。
初耳かもしれないが、釣り人の心理状態や脳波が大型魚に伝わり、彼らは人の気配を敏感に察知する。たとえ大型魚が針にかかったとしても、これまで数多の困難を乗り越え、多くの釣り人を出し抜く逃走技術を持っている。このため、大型魚がなかなか釣れないのは、その魅力の一つであり、釣りの奥深さを物語っている。
20時を回り、上げ潮が波を荒らし始めた。根の周りではメジナが数匹釣れるが、それは標準サイズに過ぎない。
サラシができる度に、仕掛けが下潮に入るタイミングが増える。流れはより複雑になり、ラインのコントロールが必須となる。その流れの先、潮に吸い込まれた仕掛けの先端には、確実に魚がいる。エサを止め、誘い、そして戻す…その一連の動作に没頭する。たまにウキが見えなくなることもあるが、それは問題ではない。潮の壁や際にエサが漂っていることが、感じ取れるからだ。
2時間以上コマセを撒いても、目の前で魚が釣れないのは納得がいかない。間違いなく、大型魚が潜んでいるはずだ。時が来れば、それは食いつく。大物を針に掛けた瞬間から、根をかわしタモに収めるまでの戦略を練る。
大物が掛かったら・・・
- 喰わせる位置は、オープンエリアの真ん中
- 根の少ない沖へ走らせるようにラインを張る
※魚は引っ張られる方向と逆へ走る - 4..0号ハリスを使用、多少の根ずれもラインブレイクは回避できる
- 1.5号竿のしなりの限界点まで曲げる
- 竿の限界点まで来ても魚の走りが止まらなければ、必要最低限レバーブレーキを開放する
- 魚を引っ張る方向の力点を都度変えるように、竿を切り返す
※ 数秒ごとに、手首を返し、小刻みに - 魚との距離を少しでも縮めるために、少しでもリールを巻く
- 魚を寄せても、余力があるので3回は沖へと走ることを想定する
- タモに入らなければ、足元の根に上げる
ついに待ち望んだアタリが手元に伝わる。大型魚のアタリは、その顕著なサインを見せない。ウキは水面下に潜り、アタリは明白ではないが、魚がエサを咥え込んでいるのは感じ取れる。
竿を静かに立ててラインを張ると、竿は徐々に力強く曲がり始める。そして竿が根本まで大きく曲がったその瞬間、魚は沖へと力強い加速で駆け出す。レバーブレーキを解放せざるを得ない状況だ。下潮に同調して逃げる魚の力は計り知れず、竿を微妙に操作しながら力の向きを変えていく。
50mほど逃げた後、動きが鈍くなるところでリールを少し巻き取る。ラインは張り詰め、緊張の高音を発している。数メートル手前に近づいたと思ったら、また数メートル沖へと逃げる。このやり取りを4~5回繰り返した後、ようやく魚は手前へと寄ってくる。
竿を垂直に立てると、魚の逃げる力を巧みに利用し、魚を水面へと誘い上げ姿を現す。月明かりで微かに大きな魚体が見える。
魚のバランスを崩し、横に寝かせると推進力はほとんどない。大波を利用し一気に手前の磯の上に引き上げる。潮が戻る前に素早くタモに入れる。70㎝超えの真鯛、感動の瞬間である。
真鯛はしばしばペアでいることを思い出す。数年前の初夏、真鯛を一匹捕まえたものの、二匹目をバラしてしまった記憶が鮮明に蘇る。もう一匹の真鯛を手に入れられたら、それは最高の瞬間となるだろう。
しかし、今のやり取りでかなり場を荒らしてしまったため、休憩を取ることにする。真鯛はクーラーに収まらないので、濡れタオルで覆い冷やしておく。これは中島会長への誕生日プレゼントにふさわしい一品となるだろう。
21時頃、波の荒れ模様を感じつつも釣りを再開するが、荒れが酷いので、後ろの磯の溝へ移動する。
二匹目の大物への挑戦は、次回に持ち越す。
この溝の狭いエリアでは、コマセの効果が顕著で、30~38cmのグレが10枚ほど手に入る。捕まえたほとんどの魚は産卵期で、白子や卵を抱えている。35cm未満の魚は全てリリースした。
23時前にはコマセが尽きて、今日の釣りを終える。0時の検量には十分間に合い、満足のいく釣行となった。この豊かな自然と、充実した時間を過ごせたことに心から感謝する。
釣行データ
日時 | 2024.4.1 18:00~22:00 |
場所 | 南房総の磯 |
潮回り 小潮 | |
天候 波/風 | 晴れ 波0.5/風北東2.5 |
水温(前日差) | 14.5℃(±0℃) |
海の状況と予測 | 夜中まで変わらず |
フカセタックル
ロッド | シマノ16BBXスペシャル MZⅡ1.5-500/550 |
リール | 15BBXテクニウム C3000DXG |
ライン | ナイロン 3号 |
ハリス | ナイロン 4.0号 |
針 | グレ 6号 |
コマセ | オキアミ4kg×2ブロック V9-1袋 |